岩橋 現在、日本での掌蹠膿疱症患者の割合は、5千人に1人といわれています。一昔前までは、2万人に1人と言われてました。このように最近になり掌蹠膿疱症は増加傾向にあります。原因としてはやはり生活習慣の問題が大きいと思います。
それと非常に診断の難しい疾患であり今まで見過ごされていた患者さんも多いのではないかと思います。
下山 今診断についての話が出ましたが具体的にはどのような場合診断に苦慮することがあるのでしょうか。
岩橋 まず第一に今まで掌蹠膿疱症は非常にまれな疾患として扱われてきたため診断をつけられる医師が少なかったことが挙げられます。
診断を誤り、水虫や主婦湿疹として漫然と治療が行われることもあります。
第二に、ご存知の方も多いかと思いますが、掌蹠膿疱症は掌蹠膿疱症性骨関節炎を合併する場合が多く見られます。つまり、皮膚科領域だけの疾患ではなく骨、つまり整形外科領域の疾患でもあるわけです。
そのため相互の科の医師の連携がうまくいっていないと発見を遅らせます。
また、手足の膿疱と全身の骨関節炎が同時に起こらず少しずれて起こることもあり、このことが診断を遅らせる原因となることがあります。
原因不明の骨関節炎と言われ放置されていた患者さんも多く診ました。
下山 つまり早期に掌蹠膿疱症と診断できる医師にかかり、治療を開始しなければならないということですね。
では具体的に今までの治療とビオチン治療の違いはどういったものなのでしょう。
このように今までいろいろな治療が試されてきましたが著効するものはありませんでした。
また治療によっては副作用が問題となることが数多くありました。
対して、ビオチン療法は、ビオチンが欠乏し糖、脂質、アミノ酸代謝が障害され、免疫異常となる状態(掌蹠膿疱症等)をビオチンを補給してやることにより改善させるというきわめてシンプルな治療法です。
症状の強さにもよりますがほぼ全例で治療効果が得られています。
また、ビオチンは本来からだの中にあるビタミンなので副作用は認められません。
下山 この病気はどういった人に起こりやすいとか傾向のようなものがあるのでしょうか。
岩橋 ビオチンは腸で作られ、腸から吸収されるため腸の弱いつまり下痢や便秘になりやすい人、タバコを吸う人に多く見られます。
おそらく食生活の欧米化により増加傾向にあります。
実際、掌蹠膿疱症患者の中には、脂肪肝、高脂血症ひどい場合には肝炎を合併している方も見られます。このため、ビオチン治療と同時に生活習慣の改善も必要となってきます。
今後も生活の欧米化が続く限り増加していく病気の一つと考えられます。
下山 掌蹠膿疱症などの免疫疾患は近年非常に増えており他人事ではないことが分かりました。
また、患者本人もこの疾患についての正しい知識を持つことが大事だと思いました。
本日は貴重なお話をどうもありがとうございました。